おトクな打者
 管理人にとって『マネー・ボール』は、「セイバーメトリクスの基本的な考え方が勉強でき……」だとか「経営についての発想の……」とかっていうのもあれど、それらの能書きを抜きにしても単純に読んで面白く、好きな本です。
 その中ではセイバーメトリクスの研究から導き出された考えを投資効率の観点から活用した様子が描かれています。
 象徴的なもののひとつが守備力の、無視とまで言いたくなるような軽視の扱い。
 失点を防ぐには投手の影響が大きく、その投手をきちんと見極められれば守備の名手など存在しなくても余計な失点はせずに済み、打撃に秀でた者を集める分でチームの収益を大きなプラスにできるかもしれません。幸い打者の評価は、四球が軽んじられているなど実際の価値と世間の評価が噛みあっておらず守備や走塁といった要素をあきらめれば意外なほど安く(従来の尺度からすれば)意外なほど得点増に有効な打者を獲得することができた、といった具合で、守備力を切り捨てることは投資効率を重視するチームとしては確かに合理的であったように見えます。
 金を持たない者が知恵を働かせて金持ちに一泡吹かせるというのは、まぁ単純な型かもしれませんが痛快な話だと思います。


 そのような観点から、日本プロ野球でコストのわりに得点増に貢献していると判断できる打者を探してみました。
 ざっくり言えばおトクだった打者。
 各選手のコストは推定年俸を見て、得点への寄与はマネー・ボールで紹介された以下の得点公式を利用。

 得点公式=(安打+四球)×塁打÷(打数+四球)

 簡単な式ですがチーム得点の予測には高い精度を誇り、打者個人にも一定の信頼度で適用できるものと考えられます。ここでは四球に死球を足しました。
 リーグ別に2008年費用対効果の高かった上位20名。

選手得点創出推定年俸効率 選手得点創出推定年俸効率
中島 俊哉33 610 543 畠山 和洋 62 900 689
内村 賢介16 300 538 天谷 宗一郎 41 600 683
中村 真人20 400 493 坂本 勇人 55 850 644
坂口 智隆57 1500 381 川島 慶三 42 960 436
根元 俊一50 1450 343 赤松 真人 39 960 410
中村 剛也96 2800 343 内川 聖一 113 3000 377
後藤 武敏37 1150 321 石川 雄洋 21 650 324
松田 宣浩83 2800 297 小窪 哲也 33 1200 272
大松 尚逸71 2400 296 福地 寿樹 80 3100 259
中西 健太18 600 292 亀井 義行 36 1400 257
一輝23 800 286 飯原 誉士 64 2500 254
栗山 巧90 3300 274 川端 慎吾 10 520 192
長谷川 勇也23 950 246 栗原 健太 112 6500 173
セギノール37 1600 231 石原 慶幸 48 2800 171
G.G.佐藤78 3700 212 バルディリス 16 1000 160
糸井 嘉男22 1030 210 吉村 裕基 87 5600 156
下山 真二54 2600 208 シーボル 56 3600 155
松坂 健太12 650 190 中村 紀洋 78 5000 155
高口 隆行13 760 176 東出 輝裕 60 4000 151
橋本 将61 3500 174 田中 浩康 66 4800 138

 年俸は『プロ野球人事部』を参考にさせて頂いた推定年俸で単位は万円。
 「効率」は1億円あたりの得点創出(得点創出÷推定年俸×10000)。

 チームごとにかなり年俸の標準レベルが違いますのでそういう事情の影響も大きいですが。
 パ・リーグはトップ3を楽天勢が独占。西武の優勝が中村剛也、栗山、G.G.佐藤といった面々がシーズン前の評価のされ方より大きく活躍したからこそであることも表れています。
 セ(そして全体)のトップは今年から4番で活躍した畠山。実はこの畠山、マネー・ボールでも取り上げられた「1打席あたり相手投手に何球投げさせたか」という統計で4.51と規定打席到達中トップであり、打席で粘って相手投手を疲弊させる才能を持っています。その意味で尚更マネー・ボール的プレーヤー。
 上記の表に入っているほとんどが「そこまで活躍すると思っていなかった選手」で、前年活躍していないから年俸が低いわけでそれは当たり前のことです。ただ一部2008年の活躍度合いが特に意外とは言えない者もおり、そういう選手はおトクというより過小評価とか不遇とか表現したくなる面もあります。



 最後に、自分からこれを書いておいてなんですが、野球の結果は最終的には勝ったか負けたか。費用対効果というのはひとつの視点に過ぎないのであって、チームへの評価として悪かったらどうというのは(第三者の自分からすれば)特にありません。今回のはあくまで話のネタとして。
 (余談ながら、本当はこれを総合評価に対して全体的にやろうかとも思っていたんですが、費用対効果の悪い面々(大概はビッグネーム)に対してコメントしづらい空気になるのでその辺はやめておきました)




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