執筆書籍等の紹介

by Baseball Concrete

書籍

『デルタ・ベースボール・リポート7』(水曜社2024)

『デルタ・ベースボール・リポート6』(水曜社2023)

『デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社2022)

『デルタ・ベースボール・リポート4』(水曜社2021)

『セイバーメトリクス入門』(水曜社2019)

『デルタ・ベースボール・リポート3』(水曜社2019)

『デルタ・ベースボール・リポート2』(水曜社2018)

『デルタ・ベースボール・リポート1』(水曜社2017)

『セイバーメトリクス・リポート5』(水曜社2016)

『セイバーメトリクス・リポート4』(水曜社2015)

『セイバーメトリクス・リポート3』(水曜社2014)

『セイバーメトリクス・リポート2』(水曜社2013・無料公開有り)

『セイバーメトリクス・リポート1』(水曜社2012)

『セイバーメトリクス・マガジン2』(デルタクリエイティブ2013)

『セイバーメトリクス・マガジン1』(デルタクリエイティブ2012・無料公開有り)

『数字で斬る!2015プロ野球 セ・リーグ編/パ・リーグ編』(ベースボールマガジン社2015)

『WEB+DB PRESS Vol.84』(技術評論社2014)

『ベースボールゲームマガジン Vol.05』(ベースボールマガジン社2013)

『Slugger 2011年11月号(「マネーボール再考」&「プレーオフ1995-2011」)』(日本スポーツ企画出版社2011)

 

ウェブ

〔1.02 Essence of Baseball〕

「[1.02 FIELDING AWARDS 2018] 中堅手部門参考分析」(2018)

「[1.02 FIELDING AWARDS 2017] 一塁手部門参考分析」(2017)

「[1.02 FIELDING AWARDS 2016] 二塁手部門参考分析」(2016)

「オールスターチームはどれだけ強いか」(2016)

「打撃成績としての『失策』」(2016)

〔Full-Count〕

「2番打者には強打者を… よく聞く説の根拠とは?」(2015)

「山崎康、松井裕、大瀬良…優れた投手は先発で使うべきか、抑えで使うべきか」(2015)

「サヨナラ打の価値はそれぞれ違う? 数字が示すヒーローたちの貢献度」(2014)

〔Delta's Weekly Report〕※有料メールマガジンにつき非公開

「DERの内野フライ補正」(Delta's Weekly Report Vol.94)

「FIPは予測のための指標か」(Delta's Weekly Report Vol.43)

「得失点のインパクト」(Delta's Weekly Report Vol.38)

「『盗塁の見えない価値』の検討から見えてくるもの」(Delta's Weekly Report Vol.28)

 

セミナー

「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」#6

 


 

『デルタ・ベースボール・リポート7』(水曜社2024)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの12冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「勝率推定式を読み解く」

目次
1.勝率推定式とは
2.初期の勝率推定式
3.初期の推定式の解釈
(1)分類と研究史的意義
(2)ピタゴラス勝率
(3)RPW
4.後発の勝率推定式
(1)初期の業績を土台にした発展
(2)Pythagenport
(3)Pythagenpat
(4)Tom TangoのRPW
5.精度の比較
6.勝率推定式の存在意義

 Bill Jamesのピタゴラス勝率、その発展版であるPythagenportやPythagenpat、Pete PalmerのRPWやTom TangoのRPWなどについて、それぞれの内容の解釈や関係性の整理を行ったものです。

 基礎的といえば基礎的な内容ですがセイバーメトリクス理論の中核を担う重要なものですし、特にピタゴラス勝率の発展形であるPythagenportとPythagenpatについてはその式が導出された背景についてこれまでに日本語での説明を見たことがなく、そのあたり今更ながら整理しておきたい気持ちがあって書きました。

 米国から20年遅れた議論なのであまりにも遅すぎるというツッコミは成り立つのですが、遅いからこそ「もうこの分野は進化することはないな」という落ち着いた気持ちで俯瞰できるメリットがありました。

 スタイルとしては「得点推定式を読み解く」(『セイバーメトリクス・リポート4』)の勝率推定式バージョンであり、「まずプレーを得点に変換し、それから得点を勝利に変換することで評価を行う」という現行のセイバーメトリクス体系について、そこから漏れるものがないかを検討した「推定値に表れない要素の一貫性」(『デルタ・ベースボール・リポート4』)と合わせて自分の中で基礎を固める三部作的な論文になりました。

 


『デルタ・ベースボール・リポート6』(水曜社2023)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの11冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「二刀流から守備位置補正を考える」

 記事を執筆した契機はタイトル通り大谷翔平の二刀流議論です。大谷が投手兼DHとして出場しているときにWARの計算においてDHの守備位置補正を適用するので正しいのか、といった点について論じました。

 結論は目新しいものではないですが、個人的には結論に至る理由付けの部分がネット上の議論を見ていても腑に落ちない部分があったためそのあたりをWARの原理原則に立ち返って検討することを趣旨としています。

 こうした検討を行いたいと思った背景にはネタ同人誌『ほとんど無害なセイバーメトリクス』に記載した野球構造図というものです。これは各守備位置の働きをRCやピタゴラス勝率に繋げてみて各選手がどう働いたら勝利がどう動くかを具体的な計算モデルにしたものですが、私は大谷を巡る議論を眺めていて、特段大谷の特殊性に着目しなくてもこの図で選手を入れ替えて勝利数の差分を測ってみればWARが出せるはずだ(それと照らし合わせれば適切な計算方法が自ずとわかるはずだ)という気持ちをずっと持っておりました。

 こうした図を持ち出すまでもなく誰もが似たような検討を暗黙のうちに行っているはずですが、具体的なモデルが念頭にあると話がわかりやすくなります。

 もちろん入れ替えるときにどのようにチーム成績が変化するかが書き込まれているわけではないのでその点は改めて向き合って検討する必要があります。むしろその過程で、人々が何を暗黙の仮定として議論しているのかを浮き上がらせることができるのではないかと考えました。

 選手を入れ替えるとどうなるのかを考える思考のツールとしては以前Twitterに書いた思考実験(?)を使いました。

baseballconcrete @bbconcrete 2022年10月24日
守備位置補正について考え続けて、「野球部のない高校で、適当に学生を9人集めて野球部を作るとする」といった想像に思いを巡らせている。

baseballconcrete @bbconcrete 2022年10月26日
「プロ野球は9人の野球部ではない」という重大な事実がわかった。

 いささか荒唐無稽に見えるかとためらいはありましたが結局記事にそのまま書いています。原始的なレベルから出発することで、二刀流がどうこうということではなく、「そもそもWARのロジックってこういうものだから、それからしたら、大谷の扱いがこうなるのは当然だよね」という筋道が自分の中で一応整理できたように思います。

 また大谷の問題を含む守備位置補正についてのトム・タンゴの議論は改めて読み返し、一覧として収集したのでブログの記事にアップしています(手動で彼のブログをずっと見て行って収集したものなので漏れがない保証はありません)。

 本稿の前提となる守備位置補正の基礎については「守備位置補正の検討」(デルタ・ベースボール・リポート3)で議論しています。

 


『デルタ・ベースボール・リポート5』(水曜社2022)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの10冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

「戦術的判断と基準率」

 この論文は、セイバーメトリクスが示す理論的な基準と実際の選択のズレについて認知バイアスを材料として一定の説明ができないかと試みたものです。

 例えば送りバントに関しては、セイバーメトリクスではその有効性について否定的な分析結果が示されることが多いです。しかし実際の野球では従来から多用されています。

 こうした「理論と現実のズレ」に直面したときに「所詮分析は机上の空論だ」とか「野球人は愚かな思い込みをしている」とか漠然と殴り合ってもあまり実りはないですし、いずれにせよ意思決定主体はなにかしら(少なくとも当人にとっての)合理性をもって選択を行っているはずです。殴り合うよりはその背景の解明が多少なり進む方が有益ではないかと考えました。

 既になされている議論として、送りバントでいえばその多用について「損失回避」と呼ばれる認知の傾向で説明されることも多いです。この説は体感的にもしっくりくるところで、損失回避で説明される部分は大きいだろうと思っています(例えば岡田さんの「実は手堅くない送りバント 「損益分岐点」は打率1割」(日経電子版))。

 しかし同時に、野球観戦をしていて、今まさに打席に入ってくる打者を見て「いやぁ打てなさそうだなぁ〜」と感じるリアルで具体的な感覚、あれには損失回避とはまた別の作用が働いているような感じがずっとしておりました。

 また逆に最近の試合でチャンスで打ちまくっている打者を打席に迎えたときの「ここは決めてくれるだろう」という迫ってくるような頼もしさ、あれも似たような身体感覚としてありますし、損失回避という説明は馴染みにくい気がします。

 統計データによって平均的な傾向のようなものが示されていたとしても実際の意思決定はその場その場の状況に対して上記のような主観的感覚を踏まえて行われるのは当然です。「基準率の錯誤」「ベイズの定理」あたりを道具として使うことでその辺の話に一歩踏み込めるのではないかと試論を組み立ててみた次第です。

 あまり分析っぽい議論ではないですが、個人的に数年前から持ち続けている「議論の対立において分析の問題だと思われていることが実は認知の問題なのではないか」という問いに対する取り組みのひとつとなります。

 


『デルタ・ベースボール・リポート4』(水曜社2021)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの9冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「推定値に表れない要素の一貫性」

 現行の主流派セイバーメトリクスであるWARなどの指標は「打撃成績や守備成績を得点・失点に換算する」「得点・失点を勝敗に換算する」ことによりパフォーマンスと勝利を繋げていくという理論的な体系が基礎になっています。このあたりは『セイバーメトリクス入門』でも図示して取り上げているところですし、ネタ同人誌『ほとんど無害なセイバーメトリクス』でもしつこく強調しています。

 しかしこうした体系については「指標に表れないここぞというときの点の取り方」や「采配による、得失点差に対する効率の良い勝ち方」といった要素が拾い漏れているのではないかという指摘が常になされるところです。

 たしかに打撃成績から得点数を推定するといっても100%の精度でできるわけではなく、何かしら漏れる要素はあります。得点・失点からの勝率の推定に関しても同様です。そうした推定値に表れない要素が小さいとか重要でないとか言えてはじめてこの体系による分析が説得力を持ちます。

 基本的にはこれはRCと実際の得点、あるいはピタゴラス勝率と実際の勝率との相関関係の強さを示せば終わる話ではあり、『セイバーメトリクス入門』でもそのような運びで説明をしております。

 それでも「漏れている少しの部分に数字に表れないチーム力があるんだ!」とする主張は可能といえば可能であり、その定量的なインパクトが実際どのくらいなのか測って結果を出してみたくなりました。

 もちろんRCやピタゴラス勝率に馴染みがある人からすれば、そこは掘っても何も出ないぞという領域なのははじめからわかっているところです。しかし「分析家には、何も出ないことがわかっていても『掘っても何も出ない』ことを示すために掘らなければならないときがある」という言葉があります(今作りました)。実際、結果を結果として示すことは大事と思います。また、場当たり的に結果を示すのではなく論理的な体系に沿って考えられる論点を整理していくというのも今後の基礎のために大事なことです。

 ピタゴラス勝率に対する実際の勝率の乖離などについてはこれまである年と次の年の相関を分析したデータなどは見たことがありますが、年を跨ぐとチームの内容も変わってしまうのでもう少しうまい分析ができないかと思いつつ、シーズン内で偶数試合と奇数試合に分けるいわゆる「偶奇法」による分析を思いつき、実行してみました。そのあたりはこれまでに実際に示されていない検証結果で、参照として価値が高い情報を残せたのではないかと思っています。

 


『セイバーメトリクス入門』(水曜社2019)

 

 恐れ多くも単著で(データの協力をいただいた関係でDELTA監修という形で)セイバーメトリクスの入門書を出させていただきました。詳しくは下記の記事で。

→『セイバーメトリクス入門』執筆の背景

 


『デルタ・ベースボール・リポート3』(水曜社2019)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの8冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「守備位置補正の検討」

 総合評価WARを算出する際には「捕手+12.5、遊撃手+7.5...」といったように守備位置ごとに補正値が割り振られるのが通常です。本論文ではその考え方や具体的な値について分析しています。

 守備位置補正については、かねてから二点ほど検討課題を感じていました。第一は、総合評価では当たり前のように守備位置補正が行われるものの、どういう理屈で何を補正するものなのかという意味づけの議論が必ずしも十分ではないのではという点。

 第二は、打撃指標による算出と守備指標による算出というふたつの道があるがこれらをどう整理するかという点です。これに関しては特にDELTAの現状の補正値では「二塁手>遊撃手」である点も気になっており、一度トム・タンゴ風の守備指標からの算出を日本でやってみなければと思っておりました。論文で実際にNPBの補正値について守備指標から算出をしています。

 いずれも明確な答えが出るというものではありませんが、具体的な数字も含めてある程度検討を行うことができ、今後の議論の材料にはなるのではないかと思っております。

「守備位置補正の検討」目次
1.守備位置補正の位置付け
2.補正値の算出方法
3.位置付け及び算出方法の小括
4.二塁手・三塁手・遊撃手の比較
5.左翼手・中堅手・右翼手の比較
6.一塁手の補正値
7.結果の総合

 


『デルタ・ベースボール・リポート2』(水曜社2018)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの7冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「勝負強さの研究」

 巷では「セイバーメトリクスは勝負強さを否定している」がなんとなく共通認識になっている感はあるものの、ではどんな論文があって分析内容はどんなものか具体的に知られているかというとそうでもない気がしたのでまとめてみました。MLBの研究を多数引用し紹介した上で日本のデータも分析し、議論を整理しています。

 なお、もちろん結論は「勝負強さは存在しないか現実的に考慮する意味はないほど微小な程度にしか観測できない」というものなのですが、問題はその結論に至る分析過程です。

「勝負強さの研究」目次
1.勝負強い打撃をめぐる議論の対立
2.勝負強さとは何か
3.原始的な尺度
4.メジャーリーグの勝負強さ研究史
5.日本プロ野球における勝負強さの分析
6.「勝負強さ」という観念は必要か

 


『デルタ・ベースボール・リポート1』(水曜社2017)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの6冊目。タイトルが刷新されましたが中身はこれまでの『セイバーメトリクス・リポート』です。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「指標の有用性をどう考えるか」

 この論考はデータを使った分析ではなく指標の解釈の仕方について考えてみるというものです。

 セイバーメトリクスの世界にはものすごくたくさん指標がありますが、どの指標が使える指標なのか、それをどういった観点で整理するかというのは意外に難しい問題です。例えば「WARも完璧な指標ではないのにWARで議論をしていいのか」「OPSが打率よりも得点との相関が強いというがそれなら打点のほうが強い」「UZRは年度間相関が弱いから守備力を表していない」といった指摘に対してどう応えるか、議論をどう整理するか。その辺についての私見を述べました。

 はじめに一般的な話をした上で記事の後半では特に「得点との相関が高いほど優れた指標であるという誤解」「年度間相関が高いほど優れた指標であるという誤解」「計算式がシンプルなほど現実に即していて優れた指標であるという誤解」という見出しでそれぞれの問題について議論しています。

「指標の有用性をどう考えるか」目次
1.氾濫する指標
2.指標は完璧ではないという批判
3.分析の目的に対する機能
4.得点との相関が高いほど優れた指標であるという誤解
5.年度間相関が高いほど優れた指標であるという誤解
6.計算式がシンプルなほど現実に即していて優れた指標であるという誤解
7.有用でないのはどちらか

 


『セイバーメトリクス・リポート5』(水曜社2016)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの5冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「打撃評価に打球方向を取り入れる」

 プレーを数値化して得点への影響を評価するということを考えたとき、安打はそもそも現行の記録方法でいいのだろうか、記録に打球方向を取り入れて打撃評価を算出すればより適切になるのではないか、という疑問を検討した分析です。

 例えばwOBAの計算なら「0.87×単打…」という具合で、この単打が右安か左安かは評価に影響しません。しかし、ライト方向へのヒットなら一塁ランナーが三塁に行きやすいのであって、右方向への打球が多い打者は左方向への打球が多い打者に比べて(ヒットの数が同じでも)得点への貢献度が高いと考えられます。この点について具体的にデータで影響度を明らかにしました。

 詳細な打球のデータを打者の評価に取り入れる意味という観点から、DIPSの裏返しであるDIBS(Defense Independent Batting Stats)によって打者を評価するのはどういうことかといったことについても理論的な検討を加えています。

 

「『2016年のセイバーメトリクス』観光案内」

 観光案内というタイトルの通り、セイバーメトリクスのさまざまな分析を読むにあたってそれぞれの分析がどういう位置付けかをわかりやすくするためのガイド的な内容の読み物です。

 当サイトで言えば「セイバーメトリクスの歴史と対象」のページに近い内容です。

 


『セイバーメトリクス・リポート4』(水曜社2015)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの4冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「得点推定式を読み解く」

 RC、BsR、LWTS、XR、といった「成績を得点に換算する数理モデル」に関して、個別の性質の検討と相互関係の整理を行った論考です。かなりボリュームが多くなってしまったのですが、得点推定式に関してはこれをひとつ読めばわかるというものになったかと思います。

 RCなどは「打者の評価指標」などと一言で紹介されがちですが、より本質的には、プレーを数量的にデータにし、それらのプレーと得点・勝利との関係を明らかにして野球の構造を理解するツールになるという存在意義があると考えています。

 守備の評価であれ投手の評価であれプレーを得点に換算するという場面では(明示的にではなくとも)得点推定式が関わってきますし、戦術の評価においてもある戦術を採用する場合にチームの利得がどうなるのかは得点推定式を背後に置かなければなりません。得点推定式はそれだけ重要です。

 

セイバーメトリクス・リポート4
「得点推定式を読み解く」目次
 
1.モデルとしての得点推定式
2.Runs Created
 (1)打者の成功の尺度
 (2)打者個人の得点
 (3)掛け算の意味
 (4)理論上のチーム補正
 (5)RC/Gという観点
 (6)RCをもたらす「偶然」
3.Base Runs
 (1)RCの課題と超克
 (2)生還率
 (3)BsRの活用
4.Linear Weights
 (1)LWTSとは何か
 (2)得点期待値という発明
 (3)得点推定式としてのLWTS
 (4)得点期待値の相対性と頑健性
5.Extrapolated Runs
 (1)重回帰分析による加算モデル
 (2)“絶滅危惧種”の得点推定式
 (3)BRとの違いからみるアウトの価値
6.乗算モデルと加算モデル
 (1)得点推定式ごとの得点価値
 (2)乗算方式と加算方式の比較
7.OPS・GPA・NOI・wOBA
 (1)OPS
 (2)GPA
 (3)NOI
 (4)wOBA
8.おわりに

 


『セイバーメトリクス・リポート3』(水曜社2014)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの3冊目。

 下記の論考を寄稿しました。

 

「投手の成績を予測する簡単な方法」

 当時MLBで「(K-BB)/PA」という簡単な指標で投手の将来の成績を予測できるという議論が行われており、この議論の整理して日本での当てはまりを検討した研究です。

 成績予測のような計算が大変な予測方法もありますが、いかに有用でも計算が難しくて手間がかかる指標は扱いづらいものですし、かといって簡単に計算できる指標でも使い道がなければ意味がありません。そのような中で「簡単なのに有用」なのが「(K-BB)/PA」です。

 日本ではK/BBが有名ですが、実は割り算ではなく引き算が適切な計算になります(そのあたりのカラクリも書きました)。

 


『セイバーメトリクス・リポート2』(水曜社2013・無料公開有り)

 本格的にセイバーメトリクスを探求するDELTAの「リポート」シリーズの2冊目。

 下記の部分を執筆しました。

「リリーフの本質・評価・最適配置」

 タイトルの通りリリーフの本質とは何か、どのように評価を行うべきか、効果的な起用戦略はどのようなものかについて検討した論考です。

 リリーフ起用という方策に関する極めて素朴な疑問として「優秀な投手がいるのであればあえてリリーフにして投球回を減らすのではなく先発にしてなるべく多くの投球回を投げさせるべきではないか」というものがあります。その方が(リリーフ登板でしかいいピッチングができないという場合を除けば)年間の総失点は少なくなるのであり、ピタゴラス勝率は得点の合計と失点の合計しか問題にしていません。

 これに関して分布を選択できることは期待値を犠牲にしても利益となることがあるという見方を述べています。

 最適配置については乱数を使ったコンピュータ・シミュレーションによりアプローチしました。「パワプロ」のような野球ゲームをイメージしてもらうとわかりやすいのですが、その中でみんなが平均的な選手であるチームに一人だけ優秀なリリーフ投手を入れて勝手に試合を行わせ、例えば「8回以降で3点以内のリード時に登板させる方針」と「8回以降で1点ビハインドから1点リードの接戦時に登板させる方針」などと色々な方針を試した場合どのような起用方針がどれだけチームの勝利を増やすかということを計測しています。

「成績予測の考え方」

 本書に掲載している統計的な成績予測について、その考え方や計算方法を説明するものです。

 成績予測(プロジェクション)というのはファンタジーベースボールが人気のアメリカでは非常に盛んな分野なのですが、何故か日本では注目されておらず、まとまった形で説明をしているのは下手をすると本稿だけなのではないかとすら思えます。また、前作のリポート1で行った予測についてどれだけ当たっていたかの検証も行なっております。

 当サイトの「2011年成績予測」はこれのプロトタイプにあたるような記事です。

「総合評価指標WARの考え方と算出方法」(岡田友輔氏と共著・リンク先で無料公開中)

 本書にて、日本で初めて総合評価指標WARの算出が行われました。なにしろ日本の読者には馴染みがない指標であるため、その考え方と算出方法をまとめました。

 DELTAが算出するWARの細かい計算方法や係数は本書の出版後少し変わっている部分もあるためこれをそのまま現在のWARの算出方法と読むことはできないのですが、大筋はほとんど変わりません。

 またWARを理解するための土台として選手評価の考え方そのものを説明していたり、wOBA・FIP・UZRという主要な指標(筆者はこれを現代セイバーメトリクス三種の神器と呼んでいます)それぞれについての説明としても活用していただけます。特にUZRの説明についてはなかなかまとまりがいいのではないかと思っています。

 


『セイバーメトリクス・リポート1』(水曜社2012)

 日本で初めての本格的なセイバーメトリクスのアニュアル(年刊本)です。多数の分析家が参加し、内容はその年の成績に関するデータ・分析と各種の研究論文で構成されています。アメリカではBaseball ProspectusのアニュアルやThe Hardball Timesのアニュアルがありますが、そういったものの日本版にあたります。

 私は下記の論考を寄稿しました。

「年齢の変化と成績の関係」

 一般的な傾向としてプロ野球選手は何歳までパフォーマンスが向上していき、何歳から下降し始めるのか、それを過去の膨大なデータから分析したものです。

 メジャーリーグではこの問題に対していくつか先行研究があり、打者では27歳あたりがピーク年齢と結論されることが多いです。例えばPhil BirnbaumがMLBのデータに基づいて行った研究では横軸に年齢、縦軸にパフォーマンス(RC27)をとった打者の年齢曲線(Aging Curve)は下のようになっています。

 

Phil Birnbaum "How Do Pitchers Age? " The Hardball Times Baseball Annual 2009

 

 MLBではちらほら見かけるこの年齢曲線ですが、日本でどうなっているのかのきちんとした算出は見たことがなく、どうしても日本の年齢曲線が見てみたいというのが分析のモチベーションでした。個人では必要なデータの収集が難しかったため、組織の力を借りる形でこの書籍で実現することができました。MLBでも同じことが起きているのですが、投手について衝撃的な結果が出たことが印象に残っています。

 プロ野球の解説では読み合いや技術が語られがちですが、年齢曲線について研究をしてから野球というのは思った以上に身体能力が結果を決めるスポーツなのだと考えるようになりました。

 


『セイバーメトリクス・マガジン2』(デルタクリエイティブ2013)

 電子書籍媒体での発売となった『セイバーメトリクス・マガジン』の2作目。前作の『セイバーメトリクス・マガジン1』とはやや毛色が異なり、UZRを使った守備の特集をメインとして、そこにコラム等が合わせっているという形になっています。守備特集を含めて何気にかなりディープな内容の書籍となっており、コアなセイバーメトリクス好きでも楽しめる一冊だと思います。

 下記の記事を寄稿しました。

 

「二塁手守備評価」

 守備特集のうち、私は二塁手の評価記事を担当しました。それぞれの守備者がどのようなゾーンに強いのかといったことをデータから明らかにしています。こういったデータによる守備の中身の探求は、単に「投票によれば誰々が1位」といった表彰をするよりもよほど面白いものだと個人的には思います。

 また付随的に、UZRに関する一般的な研究として「UZRと詳細な打球データを使わないレンジ系の評価とではどの程度相関関係があるのか」「UZRをパークファクターで補正するとどの程度影響があるか」「走者が出ることによる守備位置の変化はUZRに影響を与えるか」といった問題も検討しています。

 

 なお、UZRを使った分析に馴染みがないといきなり本書を読むのは少し大変ですが、ほんの気持ち程度ガイドになるような記事を過去にブログに書いております。

 

→SMM2をもっと楽しむために

 

「WARの経済性分析」

 『セイバーメトリクス・リポート2』で日本についても総合評価指標のWARが算出されるようになり、「WARを素材とした分析」もそこで初めて可能となりました。この記事はそのようなタイプの分析として手始めに年俸とWARの関係を見たものです。

 年俸をWARで割り算すれば簡単に「投資効率」は測れますが、個別の選手について「年俸が○億円なのに大して仕事をしなかった」と個人攻撃をしてもあまり建設的ではありません。この記事ではむしろ打撃と守備、先発と救援、若手とベテランといったさまざまな括りをとってみたときに払い過ぎになっているのはどんなところか、野球におけるどんな要素が過小評価されているのか、という一般的な原理の問題を検討しています。

 


『セイバーメトリクス・マガジン1』(デルタクリエイティブ2012・無料公開有り)

 ゴリゴリの分析に特徴がある「リポート」シリーズよりもライトな内容の書籍です。シーズンの振り返りやセイバーメトリクス系のコラムなどで構成されています。

 その立ち位置や感触については私が当時書いたブログ記事「日常的体験としてのセイバーメトリクス」を読んでいただけるとなんとなく伝わるかと思います。以下に一節だけ引用します。

 

「セイバーメトリクスをマニアックに掘り下げるのではなく、セイバーメトリクスを薄めて紹介するのでもなく、『普通に』セイバーメトリクスの視点に立って野球を語る。こういう本は、あるようでなかったものでした」

 下記の記事を寄稿しています。

 

「セイバーメトリクス発展史の中の『マネー・ボール』」(編集部と共著・リンク先で無料公開中)

 このコラムでは、書籍『マネー・ボール』の存在を軸にしながらセイバーメトリクスの誕生から今日までの成長の歴史をまとめました。

 日本でセイバーメトリクスが話題に上げられるとき、下手をすると「マネーボール」「ビル・ジェイムズ」このふたつのキーワードくらいで話が完結してしまいます。そしてその話がどこかでまた引用され、反論され、一人歩きしてひたすら繰り返されていると感じるときがあります。

 しかし本来はセイバーメトリクスには相応の歴史があり、その内容にももっと豊かな広がりがあります。それを無視して「出塁率・バント・OPS」くらいの話にばかり目を向け、それが良いだの悪いだのと繰り返し議論をしても得るものは多くありません。

 また、セイバーメトリクスには色々な指標やアイデアがありますが、雑多に乱立しているように見える指標やアイデアも、取り上げられるにはやはりそれなりの意義や文脈があります。それらの意味を関連付ける視点も重要です。

 そうした問題意識を受け、簡単ながらセイバーメトリクスの歴史を概観することで「セイバーメトリクスの世界には豊かな広がりがある」ことをざっくりとでも感覚として掴んでもらえれば、そしてそれがこれからより深くセイバーメトリクスを知っていく上でのガイドや目安になれば、という気持ちで書きました。

 

「入手可能データの日米比較」(編集部と共著)

 こちらもある意味では上に通じるのですが、セイバーメトリクスに関するアメリカの状況と日本の状況を対比させながら整理したコラムです。

 特に日本ではそもそも分析に必要なデータが得られないという大問題があり、アドバンストなデータがあることによってどれだけ分析の視野が広がるかといったことについて述べています。

 このあたりについての理解はアメリカの進んだ分析を知って知識を拡充するためにも重要なことですし、日本においてこれからどのようなデータを集めて分析を進化させていくべきかを考える上でもヒントになるものです。なお、本書の出版以後、DELTAがデータサイト1.02 Essence of Baseballを開設したことによってデータに関する状況はかなり変化しました。

 


『数字で斬る!2015プロ野球 セ・リーグ編/パ・リーグ編』(ベースボールマガジン社2015)

 2015年シーズンをセイバーメトリクスを活用してデータの観点から振り返り分析する内容の一冊。データを使いつつも小難しくならず普通の野球誌感覚で読めるキャッチーでテンポの良い内容です。

 筆者はその中では堅めの、セイバーメトリクスの本格的な研究のニュアンスを伝える論考を寄稿しました。セイバーメトリクスに関する一般レベルでの情報というのは「出塁率を重視してバント・盗塁を批判する理論」といった程度の話がひたすら繰り返されるばかりで、実際にセイバーメトリクスの研究者が単に極端な主張を続けているだけなのか、細かなニ ュアンスも汲んで繊細な研究を行っているのかという部分はなかなか紹介されません。

 そこで本書の論考では「バント」「盗塁」「勝負強さ」という議論になりやすい典型的なテーマについて、研究者が何を言っているかということを例として見ながら、セイバーメト リクスの研究が試合のダイナミズムや細かなニュアンスをなるべく汲み取ろうとしていることについて論じています。

 


『WEB+DB PRESS Vol.84』(技術評論社2014)

 WEB+DB PRESSはWebアプリケーション開発のためのプログラミング技術情報誌です。私は以下の特集記事を書かせていただきました。

 

「メジャーリーグのデータで学ぶ [速習] 統計分析」

 セイバーメトリクスという活きた題材を使って統計分析を学ぶ内容です。

 野球というのは現実社会から隔絶された箱庭の中のゲームですのでデータによる分析がしやすく、しかも基礎的な手法による分析で色々面白い結果がわかるという意味で、統計・データ分析を学ぶ題材としては非常に優れたものであると考えています(現実社会だと関連する要素が多すぎ、簡単なデータ分析によって得られる知見は相当限られています)。

 扱っている内容は初歩的なものですが、本当に平均・標準偏差あたりの統計のイロハのイから入っておりますので予備知識なしに読んでいただけます。それぞれの分析手法の紹介でメジャーリーグの実際のデータを扱い、例えば『マネー・ボール』の頃のアスレチックスの強さの秘訣を分析してみるといったことを行っています。最後は重回帰分析までいきますからそれなりに高度になりますし、何より活きたデータを扱っているため統計学の教科書をただ読み下すより遥かに「実際にデータを分析する感覚」がつかめるかと思います。

 具体的な分析の仕方に関してはExcelのどのセルを選んでどのボタンを押すというレベルで詳しく説明しています。こうした説明はセイバーメトリクスの世界では意外になかったかもしれません。

 

目次

第1章 データ分析がなぜ必要なのか

第2章 データ分析を行うための基礎知識

第3章 グラフによる可視化

第4章 単回帰分析と重回帰分析

 

  また本特集の後、WEB+DB PRESSを発行している技術評論社からStudent氏が『プロ野球でわかる!はじめての統計学』という書籍を上梓されました。雑誌の中の特集記事ではなく一冊の書籍ですので当然内容はより充実しており、教養科目レベルであれば大学の教科書としても使えそうな手堅い内容となっております。こちらも合わせて紹介しておきます。

 


『ベースボールゲームマガジン Vol.05』(ベースボールマガジン社2013)

 ベースボール・マガジン社発行の野球のゲームに関する雑誌。

 筆者は「数字から見える野球の魅力 三振編」という題名で、打者にとって三振はたしかに悪い結果だが大事なのは得点を増やすことであり、三振それ自体を悪玉として論じるのは無意味だ、という主旨の小論を寄稿しました。

 


『Slugger 2011年11月号(「マネーボール再考」&「プレーオフ1995-2011」)』(日本スポーツ企画出版社2011)

 お馴染みSluggerの、セイバーメトリクスにおける重要文献のひとつである『マネー・ボール』が映画されるタイミングに合わせてその内容を再考するという特集号です。ボロス・マクラッケンのその後の人生など『マネー・ボール』好きが読むと興味深い内容が多数掲載されています。

 私は原作の意義についての小論を寄稿しました。指標の羅列が注目されがちだがそれが本質ではなく、マネー・ボールは野球の再発見の物語であるという趣旨を書いています。

 


 

「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」#6

 株式会社DELTAが主催する、データを用いたチーム運営、戦略・戦術の立案を担える人材の育成を目的としたセミナーシリーズ「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」に登壇させていただきました。

 DELTA代表の岡田さんの進行の下、元プロ野球選手の川井貴志さん、そして私の鼎談という形で、元選手と(野球経験のない)アナリストというある種対極の立場から語るという面白い試みでした。

 意外にも会場で「Baseball Concrete(当サイト)見てます!」といったお声がけをいただき、大変ありがたかったです。

「リーダーズ・オブ・ベースボール・オペレーションズ2019」#6

 

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